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研究

高密度に酸基を有する高伝導高分子電解質膜を開発 ~次世代燃料電池・水電解装置開発等に資する脱炭素技術~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の野呂 篤史 講師(脱炭素社会創造センター兼務)らの研究グループは、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業(革新FC事業)」において、次世代燃料電池・水電解 (※注1) 装置等での利用が期待される、高密度に酸基を有する高伝導高分子電解質膜を新たに開発しました。

(注1)水電解:水の電気分解。電気エネルギーを用いて水を分解し、水素と酸素を生成させる反応。燃料電池の逆反応。

◆研究概要

近年、燃料電池が二酸化炭素を発生させないクリーンな発電手段として注目されており、自動車や家庭用コジェネレーションシステム(エネファーム)等での利用のため、その社会需要は増加しています。

燃料電池の一種である固体高分子形燃料電池 (図1) では水素より生じる水素イオン(プロトン)が高分子電解質膜中を移動し、酸素と結合する際に電気エネルギーを発生させます。そのため高分子電解質膜のプロトン伝導率を高めることは燃料電池の高性能化に欠かせません。電解質膜の伝導率は酸基 (※注2) の密度と強い相関関係があるとされており、高密度に酸基を有する電解質膜の開発に興味が持たれてきました。

(注2)酸基:酸性の官能基(特定の化学構造を持つ基、原子団)

図1 固体高分子形燃料電池の構造

本研究では、従来まで合成の難しかった高密度に酸基を有する高分子電解質膜(従来型のものと比べて酸基の密度が5倍以上)を開発しました。燃料電池を使用する一般的な温湿度下(たとえば80℃、90%RH)において、従来型の電解質膜が示す伝導率(0.15 S/cm)を大きく上回り、6倍以上の高伝導率(0.93 S/cm)を示すことが確認されました。

2040年代の燃料電池は、現在よりもはるかに厳しい作動条件(より高い温度、より低い湿度)での使用が想定されています。今回の電解質膜開発で用いた技術は、厳しい作動条件でも高伝導率を示す高分子電解質膜の合成・開発に資する技術です。

本研究成果は、2023年4月19日午後9時(日本時間)付でアメリカ化学会雑誌「ACS Applied Polymer Materials」のオンライン版にオープンアクセス論文として掲載されました。また、本研究成果は日経産業新聞、日経電子版、Yahooニュースで取り上げられました。

詳細

プレスリリース

研究代表者

大学院 工学研究科 / 未来社会創造機構 野呂 篤史 講師

https://profs.provost.nagoya-u.ac.jp/html/100002210_ja.html
https://phys-chem-polym.chembio.nagoya-u.ac.jp/member-noro.html

 

論文情報

雑誌名:ACS Applied Polymer Materials
論文タイトル:Synthesis of a Cross-linked Polymer Electrolyte Membrane with an Ultra-High Density of Sulfonic Acid Groups
DOI:10.1021/acsapm.3c00150  

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